2017年10月5日木曜日

プリンセス・プリンシパルを無料で見た結果円盤が届いた

 どうもあおとりです。仕事が忙しくなったり体調崩したり色々やってる間にいつの間にか当ブログが3ヶ月放置されていて真顔。社会人、時間の流れが早すぎる……

 まぁ仕事の愚痴というか苦しみは色々とありますがここで書くような話でもなく。
 実際問題、忙しさ的にはここ数週でどうにか一番の山場を乗り切っただろうかという塩梅であり、そろそろプライベートの方の充実に、特に何らかの生産的活動に重心をちょっと戻したいという思いがふつふつと盛り上がってきております。

 やはり純粋な時間的・精神的余裕の確保がそう言う気持ちに繋がっているというところもありますが、ここしばらく素晴らしい作品を色々と見たことで感化されているという側面も大いにあり。

 他に見たアニメとか映画についての感想も色々一つの記事で書いていたのですが、いつの間にか結構な分量になってしまったので、一旦記事を分けてプリプリ単体記事を作ることにしました。一番感想長くなってたし、円盤も買っちゃったしNE!

プリンセス・プリンシパル

http://www.pripri-anime.jp/




 ちょうどこの記事を書いている時にニコニコで一挙配信を行っており、これに乗じて1話から全部見た勢なのですが、ほんっっっっっっっっとうに面白い。すごい。

 19世紀末のロンドンでスチームパンクでスパイで主役級は全員女の子だぜという題材の時点でもう自分の好みど真ん中という感じではあるのですが、そうした土台を完璧に活かしきってなお余りあるシナリオの魅力にキャラの魅力、「スパイもの」「19世紀末ロンドン」の名に恥じない、可憐な社交界と無慈悲で殺伐とした世情が紙一重で交差する世界観。
 暗喩や嘘、機転の利いた切り返しの散りばめられた会話、細かな仕草や感情の動きを正確に表現する画と声と音響の演技。時にビターで、時にケレン味の溢れたエピソードの数々。

 とにかく構成要素の組み合わせのうまさと個々の完成度の高さが完璧に噛み合っており、自分の好みな題材であることを差っ引いても10万点ぐらい残る感じの素晴らしい出来でした。これでアニメオリジナルの作品だというんだから制作陣の覚悟と技量が伺えるというものです(原作付きとアニオリでどちらが上だとか下だとかいう話ではないですが)





 褒めるところを探すと本当に挙げきれない程ですが、どこか一点と言われれば何と言ってもトータルで見たときの伏線の張り方と、しっかりと筋が通った構成の見事さ。
 一話完結ベースで時系列シャッフル(サブタイでどの時期の話なのかは判断できる)というスタイルになっていますが、各話ごとの完成度の高さがありつつも、個々のエピソードで出た台詞や演出が後々効いてきたり、後の話を見てから戻ってみるとシーンの意味がググッと変わってきたり深みが出たりと、本当に丁寧に、1シーズンのトータルで作品を構成していることが伝わってきます。

 作品のテーマとしてあらゆるところで「嘘」というキーワードが出てきますが、登場人物たちが嘘をつく度に、それがどういう意図で誰に向けて放たれた嘘なのか、そして作品全体にどう関わってくるのかを辿っていくと面白い。時に保身のための嘘があり、他人への優しさから出る嘘があり、自分自身さえも騙すための嘘がある。
 そしてそんな彼女たちだからこそ、時に出る「本音」がずっしりと重く、そして美しいものになるという構成の妙。

 また各キャラクターの背景や性格の掘り下げも見事で、それぞれしっかりした信念と決意を持っていることが言葉や行動からにじみ出ているのが素晴らしい。
 主役5人の中でも、アンジェとプリンセスの二人は特に複雑で繊細なキャラで、二人の関係性とそれぞれの決意や振る舞いが最初から最後まで丁寧に貫かれているのは本当に見事。
 二人の関係性とか過去については8話で種明かしがされるわけですが、その真相を知った後でそれ以前の回(特に2話!)を見てみると、「ああここの表情はそういう……」とか「ああこの台詞のニュアンスは……」という具合で本当に作り込まれており、何というかその関係性の尊さを前にしてはいかなる感想を言葉にすることもできません……

 まぁこの二人の関係性についてはそれ自体が作品のテーマとストーリーの主軸という所があるので特別ですが、他のキャラクターも主役・脇役・味方・悪役とみんな個性が強く信念があり、好きになれるタイプの作品。
 自分は主役級の中では特にアンジェを気に入りました。
 何重に嘘をついた自分を演じているのか、もはや本人にすらよく分かっていなそうな状態になっているキャラですが、状況やカバーに応じて異なる表情や演技を見せる、完璧で卓越したスパイ、という顔すらも演技であるようなところがあり、演技でない素の表情を見せるのは本当に僅かな一瞬のみ。
 そうした「演じている状態を演じているキャラの演じ分け・あるいは素」を正確に演出してみせる力は本当にお見事。脚本、作画、声優、音響、どれ一つ欠けてもここまで見事な演出にはならなかったでしょう。

 この手の「自分を演ずるキャラ」とか「どこまでが本心か分からないキャラ」というようタイプは基本的に非常に自分の好みのキャラ造形なのですが、そうしたキャラが持つ、演ずる事によってしか守れない、演ずることで隠したい根っこの繊細さや弱さというようなものが垣間見える瞬間もあり、全体を通して本当に好きになれる素晴らしいキャラでありました。

 とまあ、以上述べてきたようにこいつは凄いアニメだぜとずっぷりハマっていたら、円盤が売れたら2期が出るとかゲームが当たったら2期が出るという話がTwitterで流れてきて(ファン層の無料配信に乗じた見事なマーケティング)オイオイオイ応援するわこんなんと見事に釣り上げられました。

 とりあえずゲームを調べましたが、公式サイトをざっと見た時点でこのシステムはちょっと……となり、一方の円盤に関してはコメンタリーやら番外編のピクチャードラマやら魅力的な特典が並んでいたため、これならばとうっかり円盤を買ってしまいました。

 1巻の特装版に関してはこの記事を書いている間に届いたのでとりあえず特典の絵コンテやら何やらを読んでいましたが、満足度は非常に高いです。本編とかコメンタリー、ピクチャードラマはまだ見れていませんが、こういうタイプの作品でオフィシャルな設定や演出意図が読めるというのはそれだけで本当にありがたみが強い。1話の絵コンテ、特に終盤のあたりがマジで最高です。みんな買って読もうな……!

 最終的に2期まで届くのか届かないのかはよく分かりませんし、一消費者の側からは円盤買って祈って待つ以上に出来ることはないのですが、仮に2期とまでは行かなかったとしても、小説とかマンガとかそういう形でスピンオフとかミッシングリンク的な話を色々と展開して欲しい。
 作品世界の作り込みも、キャラクターたちの魅力も、それだけ展開をしてやるだけのポテンシャルがある作品だと思います。
 この5人の少女と、無慈悲で殺伐としていてきらびやかなロンドンが織りなす物語に無限に浸っていたい。本心からそう思える素晴らしい作品でした……